腎臓内科
血尿やたんぱく尿といった尿の異常や慢性腎臓病(CKD)、腎炎、腎症などを診察いたします。
腎臓は自覚症状が起きにくく、静かに悪化することが多い臓器です。無症状であっても尿や血液検査に早くから異常が出ているということも少なくありません。
腎臓の異常を指摘された方や尿のことが気になる方は、お気軽にご相談ください。
腎臓の働き
1.尿を作り、体内の水分量、電解質バランスを保つ
腎臓は、余分な水分や電解質、老廃物を尿として体外に排泄し、必要な水分と電解質は再吸収することで、体内を一定の環境に維持する働きをしています。体内の水分量や、体液に含まれる電解質量のバランスを保つのも、腎臓の役割の1つです。
人の体は、約60%が水分でできています。汗を大量にかくなど、体内の水分量が不足したときは尿の量を減らします。一方、飲み物や食べ物で体内の水分量が増えたときは尿の量を増やして余分な水分を体外に出します。このように、水分の出入りを調整し、体内の水分量をコントロールするポンプのような働きをしているのが腎臓です。
「電解質」とは、血液や体液に含まれるナトリウム、クロール(塩素)、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどのことで、5大栄養素のミネラルに属します。電解質は神経の伝達や筋肉の運動に深くかかわり、腎臓はこれら電解質の量を一定に保つ働きももっています。
腎臓の機能が悪くなり、電解質のバランスが崩れると、むくみが出てきたり、高血圧や心不全などをもたらし、生命の危機にかかわることもあります。
2.余分な酸を排泄する
腎臓は、血液の酸度を一定に保つ役割ももっています。人の体は約60%が水分で、健康な状態では、その体液はpH7.4程度の中性に近い弱アルカリ性に保たれています。一方で、体の中では、糖質、蛋白質、脂質など栄養素の代謝に伴ない、たくさんの酸がつくられますが、余分な酸は、腎臓の働きにより尿として体の外に排泄したり、肺から二酸化炭素として排出しています。さらに残った酸は、腎臓で調節される重炭酸イオンと呼ばれる物質によって吸収され、炭酸になることでアルカリ性に働き、体内の酸度を下げます。
ところが、腎臓の働きが悪くなると、酸の排泄がうまくいかなくなり、体内は「アシドーシス」と呼ばれる酸性に傾いた状態に陥ってしまいます。体が酸性に傾くと、免疫力が低下して、さまざまな病気を引き起こす可能性があります。また、疲労感や脱力感などといった症状を感じることもあるといわれています。
このように、腎臓は血液の酸度を一定に保つ役割ももっています。体が酸性に傾いたとき、腎臓は、血液中に重炭酸イオン(アルカリ性物質)を放出します。重炭酸イオンは中和する酸と同じ量を消費しますので、糸球体でろ過されたあと、尿細管で再吸収し、補充しています。つまり、腎臓は重炭酸イオンの量を保つ働きもしているわけです。
腎臓の機能が悪くなり、重炭酸イオンが減少すると、体は酸性に傾きます。人間が生命活動を維持していくためには、腎臓が大きく関係している酸とアルカリのバランスを一定に保つ必要があります。
3.ホルモンをつくる
腎臓は、私たちが生命と健康を維持するための様々なホルモンもつくっています。腎臓でつくられるホルモンにより、私たちの体は健康な状態に保つことができています。
1つ目は、血圧を調整する「レニン」というホルモンです。糸球体の血圧は、血液をろ過するために一定に保たれています。血圧が低下すると、ろ過の働きが悪くなってしまいます。これを避けるため、血圧が下がると、腎臓は血液を供給する血管の「輸入細動脈」(ゆにゅうさいどうみゃく)でレニンをつくりだします。このレニンは血管を収縮させる作用をもつ「アンジオテンシンII」というホルモンに働きかけ、血圧を上昇させます。これによって、腎臓は血圧を一定に保っているのです。
2つ目は、「エリスロポエチン」と呼ばれる血液(赤血球)をつくるホルモンです。日々大量の血液が送り込まれる腎臓には、血液中の酸素の状態を感知するセンサーがあります。このセンサーが『酸素が足りない』と感じると、酸素を運ぶ血液を増やすために、尿細管周囲からエリスロポエチンをつくりだします。エリスロポエチンは、骨の中にある「骨髄」(こつずい)と呼ばれる血液を製造する組織に作用して、血液をつくる指示をします。腎臓の機能が悪くなると、腎臓からつくられるエリスロポエチンの量が減少するため、十分な量の血液がつくられなくなり、貧血を起こしやすくなるといわれています。
3つ目は、骨を丈夫にする「活性型ビタミンD」というホルモンです。ビタミンDは食品に含まれる栄養素ですが、そのままの形で働くことはできません。肝臓と、腎臓の尿細管で、活性型ビタミンDに変化します。活性型ビタミンDは腸からのカルシウム吸収を促し、骨を丈夫にする働きや免疫力を高める作用があります。
このようにして、腎臓でつくられるホルモンにより、私たちの体は健康な状態に保つことができています。
こんなサインを見逃さないで
血圧値の高さ・低さが目立つ
身体がむくみやすい
トイレが近くなった
尿量が増加・減少した
尿の色が濁る
尿に血が混ざっている など
慢性腎臓病(chronic kidney disease=CKD)について
CKDは慢性に経過するすべての腎臓病を指します。CKDの原因にはさまざまなものがありますが、生活習慣病(糖尿病、高血圧など)や慢性腎炎が代表的です。日本ではCKDの患者が約1,330万人(20歳以上の成人の8人に1人)いると考えられ、新たな国民病ともいわれています。
CKDの初期は自覚症状がありません。進行すると、夜間尿、貧血、倦怠感、むくみ(浮腫)、息切れなどの症状が現れてきます。これらの症状が自覚されるときには、すでにCKDがかなり進行している場合が多いと岩われており、体調の変化だけでは早期発見は困難です。早期発見のためには、定期的な検査が有効です。
CKDの診断には
(1)尿検査、画像診断、血液検査、病理などで腎障害の存在が明らかで、特に0.15g/gCr以上のタンパク尿(30㎎/gC以上のアルブミン尿)がある。
(2)GFR(eGFR)が60(ml/分/1.73m2)未満に低下していること。
以上の2つが三か月以上維持したときにCKDと診断されます。CKDはその原因や進行度(ステージ)に応じて治療目標を定め、管理していくことが重要です。食事療法や血圧管理、薬物療法などで腎機能の悪化を予防し、腎不全に進行することを予防できます。腎機能の悪化を防ぐには、治療を継続することが重要です。
慢性腎不全
慢性腎炎や糖尿病などの病気によって徐々に腎臓機能が低下することで起きるものです。
慢性腎不全になってしまうと腎臓機能低下は進行し続け、最終的には透析療法や腎移植といった腎臓の代わりとなる治療が必要となります。
腎臓の働きが正常の10%以下になると末期腎不全という状態になり、むくみや高血圧、吐き気、頭痛、倦怠感といった症状が出てきます。
検査・診断・治療について
当院では尿検査や血液検査による診断のほか、エコー(超音波)検査によって腎臓の形状や合併症の画像診断を実施しており、検査結果をもとに診断を行います。
診断結果に応じて薬物療法や食事療法のほか、透析療法にも対応しております。
腎臓疾患は初期症状の表れにくさから早期発見が困難であるため、定期的な健診や検査がとても重要です。
健診などの結果で指摘を受けた方や気になる症状がある方は、一度ご相談ください。
腎臓機能を低下させないために
腎臓機能の低下を少しでも抑えるために、悪化させる要因を可能な限り避けることも必要です。
脱水に注意する
過度な運動は避け、適度な運動を継続する
ストレスを溜めない
禁煙
感染症を予防する など